
埋蔵文化財包蔵地とは
「埋蔵文化財包蔵地」とは、地下に何らかの遺跡が存在する、または存在している可能性がある土地のことです。
文化庁のホームページによると、全国には文化財が埋まっていることが知られている「周知の埋蔵文化財包蔵地」が約46万か所もあり、毎年約9,000件程度発掘調査が行われているそうです。
埋蔵文化財包蔵地の調べ方
埋蔵文化財包蔵地を調べるには、物件が存する地域の市役所など自治体の教育委員会または文化財課(行政により名称は異なります)の窓口にて照会するのが最も確実な方法です。
窓口で「遺跡台帳」や「遺跡地図」などを確認し、物件が埋蔵文化財包蔵地内に位置しているかどうか確認することができます。
それ以外にも、自治体が埋蔵文化財包蔵地の位置をホームページで公開している場合もあります。

埋蔵文化財包蔵地内にある物件の3つのデメリット
1.発掘調査の費用負担が必要になる場合がある
埋蔵文化財包蔵地内で建物を建てる際は、事前に発掘調査を行って遺跡の記録を残す必要があり、その発掘調査費用については、個人が営利目的ではなく住宅建設を行う場合などは公費により補助される例外もありますが、原則として建築行為を行う者が負担する必要があります。
つまり、個人がアパートなどの収益物件や事務所兼用住宅などを建てる場合や、不動産会社などの事業者が住宅を建てる場合などは、発掘調査費用を自分で負担することになります。
発掘調査費用は土地が存する自治体、土地の面積、埋蔵されている文化財の種類などにより異なりますが、数百万円もの費用が必要になることが多いようです。
2.手続きや調査に時間がかかり、工事着工が遅れる可能性がある
■手続きの流れ
埋蔵文化財包蔵地内で建物を建てる際は、福岡市の場合を例にすると、下記のような手順を踏む必要があります。
工事着工の60日前までに、市役所埋蔵文化財課へ照会と届出を行います。その際、工事計画図面もあわせて提出します。
工事計画図面をもとにどの程度土地を掘削するのかを確認し、埋蔵文化財が存在すると想定される範囲との関係を審査されます。
「慎重工事」「工事立会」「要試掘」の3パターンいずれかの審査結果が出ます。
「要試掘」と判断された場合は試掘調査を行い、その試掘調査の結果で「慎重工事」「工事立会」「発掘調査」の3パターンいずれかの審査結果が出ます。
「発掘調査」と判断された場合、市役所埋蔵文化財課と協議のうえ、発掘調査が実施されます。
審査結果がわかるまでは、買主は工事着工をすることができないため、数ヶ月~1年以上、工事着工が遅れる可能性があります。
■審査(試掘調査)結果が「慎重工事」の場合
工事計画の変更は必要なく、慎重に工事を実施すれば工事着工可能です。
■審査(試掘調査)結果が「工事立会」の場合
工事が埋蔵文化財に影響がないか確認するために、市役所の職員が工事に立ち会うことになります。
工事着工は可能ですが、市の担当職員と日程や時間帯について調整が必要となります。そのため、買主の希望通りには工事着工ができない可能性があります。
■審査結果が「要試掘」の場合
埋蔵文化財の有無や深さを確認するために、敷地の一部を重機で掘り下げて、試掘調査を実施することになります。
試掘調査は更地の状態で実施しますので、あらかじめ建物は解体撤去し、樹木や埋設物などの障害物も撤去しなければなりません。
また、アスファルトやコンクリートで舗装されている場合も同様に、事前に撤去しなければなりません。
さらに、試掘調査にあたり重機を使用するため、近隣住民へ事前に騒音についての周知を行う必要があり、試掘調査当日は掘り下げ開始から埋め戻し完了まで現場にて立会う必要があるなど、撤去費用に加え手間と時間もかかります。
■試掘調査結果が「発掘調査」の場合
発掘調査が実施され、埋蔵文化財の記録保存等を行う場合があります。発掘調査に要する期間は土地の面積、埋蔵されている文化財の種類などにより異なりますが、数ヶ月~1年以上はかかるようです。
その間、当然ながら買主は工事着工することができないうえに、状況によっては数百万円の発掘調査費用を自分で負担しなければならない可能性もあります。
3.予定した建物が建てられない場合がある
数ヶ月~1年以上の時間をかけて発掘調査を行ったにもかかわらず、その結果工事の計画変更の協議が必要となり、建築が制限される可能性があります。
例えば地盤改良工事を禁止されてしまうと、希望通りの建物が建てられない場合も考えられます。
そのような買主側のリスクを軽減するため、個人が住宅を建てる場合以外では、発掘調査費用にかかる費用を売買代金から減額されたり、売買契約書に「発掘調査が必要と判明した場合は契約が白紙解除となる旨の特約」を入れるなどの対応が必要となる可能性があります。
埋蔵文化財包蔵地内にある物件を売却する5つの方法
1.試掘調査や発掘調査済みの物件であることを説明し売却する
自治体の教育委員会または文化財課(行政により名称は異なります)の窓口にて、ご自身の物件について試掘調査や発掘調査の履歴を確認したり、建築指導課(行政により名称は異なります)で現在建っている建物が建てられた時の制限などを確認してみましょう。
過去に試掘調査や発掘調査を実施している物件だと分かれば、現在建っている建物と同じ規模、同じ構造の建物であれば、新たに試掘調査や発掘調査を行わなくても済む可能性がありますので、その旨を説明のうえ、納得して頂ける買主を探して売却するという方法があります。
ただし現在建っている建物が古い場合、自治体に新築時の資料が保管されていないケースや、新たに建てる建物の構造によっては再調査が必要となるケース、自治体によっては建築の都度新たに照会が必要となるケースなどもありますので、注意が必要です。
2.自身で試掘調査や発掘調査をしたうえで売却する
売主が自分で試掘調査、発掘調査を行い、建築に制限を受けない土地であることを先に判明させておけば、売却しやすくなります。
ただし試掘調査や発掘調査を行う際には土地を更地にしておく必要があるため、現在建物が建っている土地であれば建物を解体する必要があります。
もちろん解体工事には相当の費用がかかりますし、発掘調査にも数百万円の費用がかかる可能性があります。
3.建築できなくても気にしない買主に売却する
建物を建てる予定がなく、例えば駐車場用地など土地として購入したいという方や、建物を建て直さずリフォームして住み続けるという方への売却は可能です。
ただしニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
4.建物をリフォームして売却する
現在建っている建物を売主がリフォームして、あと数十年は建替えをせずとも住み続けられるような物件に仕上げれば、売却しやすいかもしれません。
ただし建物をリフォームしたからといって文化財保護法の制限自体は無くなるわけではありませんので、リフォームにかかった費用を必ずしも販売価格に上乗せできるわけではない、というリスクも覚悟しておくべきでしょう。
5.不動産買取業者に売却する
一般のお客様の中から買い手を探すとなると、前述したように建築制限のリスクや発掘調査の費用負担リスクがあるため、長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
不動産買取業者に物件を売却すれば短期間で売却できるうえに、解体やリフォームなどに手間と費用と時間をかける必要もなく、不動産のプロが買い取ることで売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
※売買契約書に「発掘調査が必要と判明した場合は契約が白紙解除となる旨の特約」が入るなどの可能性はあります。
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